筋トレとは?(その6) [身体の使い方]
筋トレについてのブログ、続けていきます。
地球上の様々な力に対応して生命力を維持している私たちの体をうまく使うには、その力と生命力の調和を感じながら動くことが重要ですが、特に地球の重力との関係が欠かせないため、体の軸をどう作るかを正しく把握する必要があるというところまでお話しました。
今回はそこからお話しましょう。
話を解りやすくするために、あえて遠回りをしてまず怪我という現象について考えていきます。
私達の体は絶えず怪我のリスクに取り囲まれています。どんなに注意しても自分にまったく落ち度がなくても怪我というものは突然襲ってくるものです。様々なストレス下でパフォーマンスすることは、怪我のリスクに自ら近づいていくようなものかもしれません。それは運動をすることだけでなく、長時間座り続けてパソコン作業をすることも、体にかかる負担という意味では同様の強いストレス下にさらされているということです。
それでも私たちの多くは、進んでリスクを選びます。夢を実現したい。家族を養いたい。趣味を楽しみたい。それでこそ人生だと思って挑み続けるのです。この前向きな気持ちでリスクに挑んでいると、時に襲ってくるのが怪我です。
怪我をすると誰しもそこから学ぼうとします。何が愚かだったのか?どうすれば怪我しないで済んだのか?意識レベルだけでなく、この反応は無意識レベルでも起こります。避けようのない事故であるとすれば、後は守るしかありません。
極端な例はムチウチ症です。自動車事故などの衝撃に、通常の力で耐えられないと体が判断した時、特に骨や筋肉の量が少ない頚椎(背骨の首の部分)は一瞬で動かないようロックをかけます。自動車事故のような強い衝撃をうけた場合この体の反応がなければ、事故死していたケースも多いことでしょう。背骨は守りの要です。背骨があることで、私たちの体は致命的なダメージから逃れることができます。
長時間体の許容範囲を超えるまで無理に座り続けたり、無理な荷重を受け止めることになると、腰は時にギックリ腰という現象で腰にロックをかけて守ってくれます。首だけでなく、守るという背骨の重要な仕事は腰にも必要になりやすいものです。
問題は、リスクが去った後です。ロックのかかった体は以前のようには動かなくなります。これが怪我から学んだ教訓です。「動かなければ怪我をしない。」意識レベルでも、無意識レベルでも以前のようには体は動かなくなるものです。
スポーツの世界でもよく大きな怪我の後、それまでのように体が動かなくってしまう選手が少なくありません。無邪気にリスクを冒して攻めにいったころの調子を取り戻すのは難しくなるものです。それが怪我の後遺症の中の大きな要素のひとつです。
さて今日の本題の軸の話にもどりましょう。なぜ怪我の話をしたかというと、背骨が背中にあるからです。そして守りの要だからです。
背骨に体を支える役割を与えれば与えるほど体は守りに入ります。赤ちゃんが世界に無邪気な瞳で歩き出したころの柔らかい体は、大人になるにしたがって多かれ少なかれ失っていきます。怪我の後遺症の時と同様に、ストレスや疲れの中で背骨が体を守らなければ乗り切れないことを経験してきた大人は、硬い体で守りながら動いていくことを学びます。これは大人になって体が重くなる原因でもあります。
一方で地球の重力は地球の中心に向かって、地表面と直角方向に体を引っ張るので、立っている人は、もしその方向に体の水平方向の重さの中心軸を重ね合わせられれば力を抜いても立ち続けていることができます。机の上に鉛筆を垂直に立てる遊びをしたことはありませんか?うまく真っすぐ立てられれば手を放しても鉛筆は倒れません。それと同じです。
そして体を支える軸は体幹では重さの中心軸のあるお腹に作らなければ体は傾きます。背中に軸を作れば必然的に力で支えなければなりません。傾いた鉛筆同様です。
大人になって背骨を使って守りながら支えている体が重くなる原因はここにもあります。補助輪という転倒から守る仕組みが付いた自転車よりも、バランスだけで支える補助輪を外した自転車の方が軽やかなのと同じです。
背骨に支えてもらうと頼りになるしリスク回避の安心感があります。筋肉も少し楽になる気がしますが、背骨は背中にあるので体は後ろに傾きます。傾いた体は地球の重力と戦い続けなければなりません。自分では猫背になったり、反り返ったりすると安心だしとてもリラックスしていると思っていても、実は背骨は重力と戦ってロックをかけるよう力をいれ続けているのです。その証拠にダラッと力を抜けば抜くほど体は重く、動きにくくなります。
そして後ろに傾いた体は守りには適しています。腰が引けているという表現を聞いたことはありませんか?しかし人間は原則として前に向かってパフォーマンスする生き物です。腰が引けて後ろに傾いた体は地球の重力と戦うために、パフォーマンスにもブレーキをかけます。
それなら背骨ごと前に体を傾ければどうでしょうか?腹部や胸部を背骨~背中に乗せて後ろ向きに反っているときは背骨は得意な守る仕事をすればいいだけです。自動車事故の衝撃にも負けないパワーを遺憾なく発揮できます。ただし背骨は攻めに行くことがとても不得意です。守っている背骨を前に傾けて軸に近づければ、体は守りにくくなり、ますます背骨は守る力を強めることになります。
これが腰痛の人が前かがみになれなくなる原因です。
大人になって体が重くなる前は、軸はお腹にあります。これがいわばデフォルトです。体の仕組みが解れば解るほど、はじめからそう設計されていることが見えてきます。背骨が守らなければならないのは、体にとっての緊急事態です。緊急事態に頻繁に晒される強いストレス下にある人は、体が戒厳令を敷かなくても緊急事態を乗り切れるよう筋肉を強化する必要があります。それができれば、デフォルトのまま柔らかくて強い人になれます。大相撲の力士のように、バレエのトップダンサーのように。
彼らは自動車事故のようなぶつかり合いを日常にしても、体にロックがかからないように鍛えています。無理な姿勢を、美しさや表現の極限まで突き詰めて力強く、そして柔らかくパフォーマンスできるようトレーニングしています。
彼らだけでなく、多くのトップアスリート達は、ロックがかかりにくい動きやすい体とストレスに負けない強さの両立を求めてトレーニングしています。
彼らにはフォームがあります。フォームがしっかりしていれば、鍛えるための体への負荷に対して守りのロックの力を使わないで筋力をアップさせることができるのです。
そのフォームの要とは、地球の重力から自由になること。つまり手を放しても倒れない鉛筆のように軸を維持する「体の仕組み」と、「攻めの筋力」です。
長い続き物のこの筋トレについてのお話が、ようやくまとまってきました。
たくさんの筋肉の中から、トレーニングの目的にあった正しい筋肉を選び(その1)(その2)、無駄な力を抜いて正しいフォームで(その3)、また、力を抜いたいいフォームになるためにも自力だけに頼らず、特に地球の重力と正しい関係をもって(その4)(その5)(その6)、背骨のロックを避けて攻めの筋力で(その6)、筋トレをすればよいというところまできました。
今回も長くなりましたので続きはまた次回。
地球上の様々な力に対応して生命力を維持している私たちの体をうまく使うには、その力と生命力の調和を感じながら動くことが重要ですが、特に地球の重力との関係が欠かせないため、体の軸をどう作るかを正しく把握する必要があるというところまでお話しました。
今回はそこからお話しましょう。
話を解りやすくするために、あえて遠回りをしてまず怪我という現象について考えていきます。
私達の体は絶えず怪我のリスクに取り囲まれています。どんなに注意しても自分にまったく落ち度がなくても怪我というものは突然襲ってくるものです。様々なストレス下でパフォーマンスすることは、怪我のリスクに自ら近づいていくようなものかもしれません。それは運動をすることだけでなく、長時間座り続けてパソコン作業をすることも、体にかかる負担という意味では同様の強いストレス下にさらされているということです。
それでも私たちの多くは、進んでリスクを選びます。夢を実現したい。家族を養いたい。趣味を楽しみたい。それでこそ人生だと思って挑み続けるのです。この前向きな気持ちでリスクに挑んでいると、時に襲ってくるのが怪我です。
怪我をすると誰しもそこから学ぼうとします。何が愚かだったのか?どうすれば怪我しないで済んだのか?意識レベルだけでなく、この反応は無意識レベルでも起こります。避けようのない事故であるとすれば、後は守るしかありません。
極端な例はムチウチ症です。自動車事故などの衝撃に、通常の力で耐えられないと体が判断した時、特に骨や筋肉の量が少ない頚椎(背骨の首の部分)は一瞬で動かないようロックをかけます。自動車事故のような強い衝撃をうけた場合この体の反応がなければ、事故死していたケースも多いことでしょう。背骨は守りの要です。背骨があることで、私たちの体は致命的なダメージから逃れることができます。
長時間体の許容範囲を超えるまで無理に座り続けたり、無理な荷重を受け止めることになると、腰は時にギックリ腰という現象で腰にロックをかけて守ってくれます。首だけでなく、守るという背骨の重要な仕事は腰にも必要になりやすいものです。
問題は、リスクが去った後です。ロックのかかった体は以前のようには動かなくなります。これが怪我から学んだ教訓です。「動かなければ怪我をしない。」意識レベルでも、無意識レベルでも以前のようには体は動かなくなるものです。
スポーツの世界でもよく大きな怪我の後、それまでのように体が動かなくってしまう選手が少なくありません。無邪気にリスクを冒して攻めにいったころの調子を取り戻すのは難しくなるものです。それが怪我の後遺症の中の大きな要素のひとつです。
さて今日の本題の軸の話にもどりましょう。なぜ怪我の話をしたかというと、背骨が背中にあるからです。そして守りの要だからです。
背骨に体を支える役割を与えれば与えるほど体は守りに入ります。赤ちゃんが世界に無邪気な瞳で歩き出したころの柔らかい体は、大人になるにしたがって多かれ少なかれ失っていきます。怪我の後遺症の時と同様に、ストレスや疲れの中で背骨が体を守らなければ乗り切れないことを経験してきた大人は、硬い体で守りながら動いていくことを学びます。これは大人になって体が重くなる原因でもあります。
一方で地球の重力は地球の中心に向かって、地表面と直角方向に体を引っ張るので、立っている人は、もしその方向に体の水平方向の重さの中心軸を重ね合わせられれば力を抜いても立ち続けていることができます。机の上に鉛筆を垂直に立てる遊びをしたことはありませんか?うまく真っすぐ立てられれば手を放しても鉛筆は倒れません。それと同じです。
そして体を支える軸は体幹では重さの中心軸のあるお腹に作らなければ体は傾きます。背中に軸を作れば必然的に力で支えなければなりません。傾いた鉛筆同様です。
大人になって背骨を使って守りながら支えている体が重くなる原因はここにもあります。補助輪という転倒から守る仕組みが付いた自転車よりも、バランスだけで支える補助輪を外した自転車の方が軽やかなのと同じです。
背骨に支えてもらうと頼りになるしリスク回避の安心感があります。筋肉も少し楽になる気がしますが、背骨は背中にあるので体は後ろに傾きます。傾いた体は地球の重力と戦い続けなければなりません。自分では猫背になったり、反り返ったりすると安心だしとてもリラックスしていると思っていても、実は背骨は重力と戦ってロックをかけるよう力をいれ続けているのです。その証拠にダラッと力を抜けば抜くほど体は重く、動きにくくなります。
そして後ろに傾いた体は守りには適しています。腰が引けているという表現を聞いたことはありませんか?しかし人間は原則として前に向かってパフォーマンスする生き物です。腰が引けて後ろに傾いた体は地球の重力と戦うために、パフォーマンスにもブレーキをかけます。
それなら背骨ごと前に体を傾ければどうでしょうか?腹部や胸部を背骨~背中に乗せて後ろ向きに反っているときは背骨は得意な守る仕事をすればいいだけです。自動車事故の衝撃にも負けないパワーを遺憾なく発揮できます。ただし背骨は攻めに行くことがとても不得意です。守っている背骨を前に傾けて軸に近づければ、体は守りにくくなり、ますます背骨は守る力を強めることになります。
これが腰痛の人が前かがみになれなくなる原因です。
大人になって体が重くなる前は、軸はお腹にあります。これがいわばデフォルトです。体の仕組みが解れば解るほど、はじめからそう設計されていることが見えてきます。背骨が守らなければならないのは、体にとっての緊急事態です。緊急事態に頻繁に晒される強いストレス下にある人は、体が戒厳令を敷かなくても緊急事態を乗り切れるよう筋肉を強化する必要があります。それができれば、デフォルトのまま柔らかくて強い人になれます。大相撲の力士のように、バレエのトップダンサーのように。
彼らは自動車事故のようなぶつかり合いを日常にしても、体にロックがかからないように鍛えています。無理な姿勢を、美しさや表現の極限まで突き詰めて力強く、そして柔らかくパフォーマンスできるようトレーニングしています。
彼らだけでなく、多くのトップアスリート達は、ロックがかかりにくい動きやすい体とストレスに負けない強さの両立を求めてトレーニングしています。
彼らにはフォームがあります。フォームがしっかりしていれば、鍛えるための体への負荷に対して守りのロックの力を使わないで筋力をアップさせることができるのです。
そのフォームの要とは、地球の重力から自由になること。つまり手を放しても倒れない鉛筆のように軸を維持する「体の仕組み」と、「攻めの筋力」です。
長い続き物のこの筋トレについてのお話が、ようやくまとまってきました。
たくさんの筋肉の中から、トレーニングの目的にあった正しい筋肉を選び(その1)(その2)、無駄な力を抜いて正しいフォームで(その3)、また、力を抜いたいいフォームになるためにも自力だけに頼らず、特に地球の重力と正しい関係をもって(その4)(その5)(その6)、背骨のロックを避けて攻めの筋力で(その6)、筋トレをすればよいというところまできました。
今回も長くなりましたので続きはまた次回。
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